南房総オーガニック長期研修での館山パイオニアファームの作業。
こちらはいちじくの観光農園がメインで、畑のすぐそばにはいちじくパウンドケーキやいちじくソフトクリームなどが味わえる軽喫茶店がある。他農園とは少し違った営業スタイルだ。
まずは簡単にいちじくについて講義を行ってもらった。
いちじくの品種は世界で700種と多く、こちらではそのうちの10種を植えている。だが半分くらいは実験的なもので主力は4種ということだ。原産地はアラビア南部と暖かく、乾燥している地域だ。そのためあまり寒いところは向かない。館山なら冬でもマイナス4度くらいで済むので育てやすい。
実が取れるのはハウスだと7月終わりから12月中頃と長めだ。露地だと2か月ほど短くなる。いちじく自体は生命力が強く、増やすのも挿し木で増やせるので経営的にもやりやすいとのこと。
■いちじく剪定
こちらがハウス内のいちじくだ。一文字仕立てという方法で育てられている。上に伸びている枝に実がついていたわけだが、今回はこれを切って剪定していく。
こちらは切ったあと。見づらいと思うが、小さいにきびのようなものがある。これが新しい芽だ。新しい芽は節に大体できており、根本に近い芽を二つ程度残して切る。切る際は節と節の間で切る。
・切ったあとはボンド
切った跡は木工用ボンドを塗っておく。こうすることで切り口から痛むのを防ぐ。専用のものもあるが値段が高いのでこちらではボンドを使用しているとのことだ。資材はなるべく安く済ませたい。
こちらが剪定し終わった後。だいぶさみしい感じになってしまったが、残した芽が成長し、夏には観光で訪れた人々が楽しそうに実をとっていることだろう。
・翌日は露地での剪定
こちらが剪定前だ。今日はいい天気だなー
天気がいいので虫も結構いる。夏は蚊や虻によく刺されるだろうから虫よけの対策もしておきたい。まあ気にしない人は気にしないと思うが。
休憩中に外観を撮影。逆光で見づらいが、右の小さめの建物が喫茶店だ。左に見えるハウスと、写真には写らなかったがハウスの横の露地にいちじくが植わっており、ここでいちじく狩りができる。
午前と午後半分を使って剪定を行った。まだ残っているが時間の都合で終了した。
■挿し木苗作り
さて、剪定が終わったら挿し木苗を作る。まずは水につけておいた枝を短く切る。枝は切り口を水につけておけば3、4日は大丈夫だ。
短く切った枝はこちら。枝は上下を間違えずポットに植えたいが、切ってしまうとわからなくなる。そこで確かめる方法が枝の下部に見えるでこぼこの部分だ。木の内部が露出している部分があるが、ここは葉がついていたところだ。そのすぐ上に実がついていた跡がある。実は葉より上につくのでこの枝の方向は手のある方が上ということになる。
ポットに枝の半分くらいを指し、土を押し固めて完成。後は一日一回表面を湿らす程度の水まきをかかさず行っていく。
挿し木苗作業で2点ミスがあったのだが、一つは切り口にボンドを塗る作業。もう一つはこちらの写真をご覧いただきたい。
見誤ったのだが、芽が5つぐらいついており、長さも少し長すぎた。あまり芽が密集してしまう場合は少し多くのこしてもいいのだがこれは残しすぎだ。また、この長さで一年を迎えると、次の枝が横に伸びていき、年々この枝だけ横に伸びていくことになってしまう。枝ひとつの剪定ミスが観光客の妨げになる可能性もあるので一本一本注意して作業しなければならない。
作った苗を頂いた。ありがとうございます。大切に育てます。
■びわ山での袋かけ
最終日は少し車で移動して、びわ山に来た。これからびわの摘果と袋かけを作業する。
びわは葉が20枚程度の塊に実を一つだけつけるようにすると、大きい果実となる。これ以上ついていると他の実にも栄養がいくことになるので結果として小さい実ばかりになってしまう。そこで、複数ついている実の中から最も大きく、傷のない綺麗なもののみを残して他をとってしまう。これを摘果という。
摘果したものに紙の袋をかける。虫予防、鳥予防効果が期待できる。びわは一粒が高価なので取りこぼしの無いよう注意したい。
こちらがびわの木だ。びわはほっておくと上に伸びていくがそうなると取りづらい。なので、ある程度成長したころ水を入れたペットボトルを枝にぶら下げて強制的に横に伸びていくように調節する。
・指サックをつける
びわ用の袋は紙製で折りたたまれている。こすり合わせて袋を開く必要があるので指サックを装着する。
こちらが袋をかけた状態。なるべく膨らませた状態でかけるのが好ましい。
完成した木がこちら。袋を外してびわの実が出来上がってる姿はさぞ綺麗なものだろう。
館山パイオニアファームでの作業はこれで終了。唯一の果樹農園ということもあって作業していて新鮮だった。